眠った村と壊れた橋。

レビュー多。

『ARIA The NATURAL サントラ』へのAmazonレビューの写し

画廊の中をめぐり歩くような……


「テレビアニメ『ARIA The NATURAL』のオリジナルサウンドトラック。作り手は『ANIMATION』の時と同じくChoro Clubを初めとするお歴々。


『ARIA』という作品はそのユートピア的な世界、キャラたちの豊かな個性に加えて、音楽が優れて際立っている。本当に美しく装飾された浄土的な世界の物語である。


 個々のトラックは、アニメでの使用を目的としている割に再生時間が長いため、味わいに深みがあり、アニメから切り離しても単体で存立し得る充分な強度を持っている。

 しかし『ANIMATION』のサントラと比べて、今作はどう違うのだろう。

 しっくりする答えが出ないが、『NATURAL』のサントラは、『ARIA』という世界の独自の雰囲気を表現する曲より、"アジサイの小径" や "夕凪" といった、現実にある主に自然由来の言葉から作られた曲が幾分多い気がする。


 楽曲への平易な名付け方が作為的になされたのかどうかは分からないが、それは奇しくも特記すべき効果を『NATURAL』の音楽風景にもたらしている。

 というのは、元々ある『ARIA』のユートピア的な架空の世界の中に、"入道雲の下で" や "通り雨がやんだら" などの調べで自然を描写することにより、幻想的な雰囲気が醸し出されているのである。


 しかし幻想的であり得るのは『ARIA』の作品の力に頼っているからではない。

 このCDに収録された作品は個々に豊かな創造性に富んでいる。ゆったり聴いていると、まるで色々な絵画が並ぶ画廊を歩いている心地になる。

 実際、わたし自身長い間アニメを見返していないゆえ、どのトラックがどの場面で使われていたのかまるで記憶にないのだが、それでも楽曲はみずみずしい味わいに満ちていて、彩りに溢れたまぼろしを与えてくれる。

 "運河はめぐる" の余韻を一度じっくり感じていただきたい。それまでの軽快なメロディーの後の、ベルの音を伴った長い飛行機雲のような余韻は、想像を掻き立てる響きを耳に残してくれる。

 弦楽器のフェードインから始まる "アジサイの小径" を聴けば、雨粒に濡れたアジサイの花の、小庭のような街の一角に咲いている画が、まざまざと目に見えて浮かんでくる。何だか傘を差している気分にもなれる。

 "落陽" は少し不気味な出だしだ。だが、低く鳴る弦楽器の音と高い鍵盤の音のコンビネーションは、暗くなっていく夜の間際の憂愁を巧みに表現していると思う。

 "夕凪"は最後に近いトラックだ。そしてサントラの末尾を飾る曲の一つとして最も相応しい。この曲のバックに流れるエコー掛かったコーラスは、押し寄せてくる夜の気配や、波立ちの止んだ水面の静けさを歌って、"落陽" 以来の憂愁を想起させる。


 最高評価を付けないでは申し訳ない珠玉のサントラです。


 皆さんもぜひご一聴を!」


ARIA The NATURAL ORIGINAL SOUNDTRACK due (ドゥーエ)
ARIA The NATURAL ORIGINAL SOUNDTRACK due (ドゥーエ)
ビクターエンタテインメント
2006-05-24
ミュージック


×

非ログインユーザーとして返信する

あと 2000文字

※は必須項目です。