眠った村と壊れた橋。

レビュー多。

携帯を携帯しないことの僥倖

 最近ぼく、かなり「寝汚(いぎたな)い」です。よくうたた寝するんですよね。寝たいわけじゃないのに、いつの間にか寝てしまう。時間に明確な区切りを付けていないせいでしょうね。気を付けようと思ってはいるものの、どうしても隙を目ざとく見つけては、つい怠けてしまって……はい、反省します。


 しかし、携帯を持たないという怠慢あるいは携帯を持ってき忘れたという不手際がひょんな幸運を招くことがあるんですね。

 今日わたしは携帯を持っていませんでした。持っていない状態で、あるお店に行きました。日曜日で好天ゆえ、お店は繁盛していました。

 そこで、知らない人に話しかけられたんです。同性の方でした。年のころは恐らく大差ないでしょう。あっても二つ三つ程度に違いありません。

 その人と、見ている商品が同じだったため少し会話したんですよね。けっこう滑らかなやり取りで、笑いあったりうなずき合ったり、相性は悪くなさそうでした。

 ですが、ぼくは穏やかならぬ感情を抱いていました。それは幼少の子が知らないおじさんに話しかけられた時の心境にいささか似ているかと思います。

 たまたまその人のお兄さんの話が出たんですが、そのお兄さんというのが、話を聞く限りでは、超が付くほどのクズらしく、衝撃を禁じえませんでした。別段犯罪をしたわけではないんですが、何というのか、良心が欠如しているのが明らかな人のようでした。

 その話を聞いた時点でぼくは不安を覚えました。

 それからぼくは相手をやんわり遠ざけはじめ、それでも有効な拒絶反応は臆病のために示せず、色々なアプローチを身に受けなければなりませんでした。例えば、「お茶しませんか」とか、「また会いたいですね」など。結構はっきりと雄弁に誘われました。

 で、今日は用事があって、なんていう便利な言い訳で逃れようとしても、そんな風に少し強引な相手は、「じゃあ連絡先教えてください」と言ってくるわけです。

 そんな時、もし携帯を持っていた場合、絶望しかないですよね。

(ああしまった、携帯持ってるわ……)

 そして連絡先を教えて、晴れてアドレスブックにわけの分からない素性の知れない他人が登録され、ラインかメールかで色々なメッセージを送ってこられるようになるわけですね。

 まぁ確かに、「すいません携帯持ってないんです」って言うことは可能でしょうが、果たして今時携帯持ってないんですよ、にしっかりした不自然でない根拠付けが出来る人がいるのでしょうか?

 おじいちゃんおばあちゃんが持っていないと言うのなら簡単に納得できますが、およそ大学生程度の人間が携帯を持っていないというのは異常と言っても過言ではないでしょう。まさかまだしつけや節操に厳しい親に所持を禁じられているわけではあるまいし。

 で、ぼくは言ったわけです、「携帯持ってません」と。すると当然、追及されました。おかしい、不自然だ、若いのに、ってな感じで。(放っとけって話ですよね。)

 色々言い返しました。言い加えました。幸いぼくは普段携帯を持ち歩かない時がしばしばあるので、また実際今日は持ち歩いていなかったので、相手に対し、必ずしも不自然でない言い訳で、ごまかすことが出来たわけです。

 小一時間の交渉の末、友人への加入なのか、とにかくぼくは謎の誘惑をしりぞけて、親切ではあれ本来は不要な異物を携帯に取り込まずに済んだわけです。

 めでたし、めでたし。


 しょうみ、「また会いたいですね」って言われた時はかなり怖かったっすよ……

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