眠った村と壊れた橋。

レビュー多。

『ヨコハマ買い出し紀行』(DVD)へのAmazonレビューの写し

『胸ときめく癒し系アニメーション』


「この作品の感想を抒べるには、色んな言葉を持ってこなくてはならない。この作品の感想を抒べるには、わたしは余りにも言葉を知らなすぎる。だが、僭越だと分かっていても、感想を抒べないではいられない。そんな作品がこの『ヨコハマ買い出し紀行』。


 この話で最も特記すべきは、細やかに生命を吹き込まれたアニメーションであろう。音楽、台詞、プロット等の他の要素は、アニメーションを際立たせる目的からあえて控えめにされているような感じがある。BGMは極力はぶかれ、キャラたちの言葉使いには特段の奇抜さがない。話の展開の仕方はあっと言わせるようなものではなく、非常に日常的で散漫である。それらの要素と助け合って、自然や生活の"微かな"、ほとんど静寂と言っていいほどの音の中で動くアニメーションは、満面に配慮が行き届いているように綿密に描かれていて、着眼点は多い。キャラの柔軟な挙止、重なりあって流れる雲の立体感、広い水面の凪いだところと波立つところとの対照。枚挙に暇がない。(他は作品の中でどうぞ!)


 この物語において視聴者の感情移入の器となる主人公アルファは、ロボットとして設定されている。が、ルックスはただの人間の美少女である。ロボットらしい描写は幾つかあるが、全話を通して見ても、人間とまるで遜色がない。なのにどうしてアルファはロボットなのか? それは視聴者に意見が委ねられた、想像を掻き立てられる楽しい疑問である。この物語の世界においてアルファがロボットであるということが、彼女にどんな可能性を持たせるのか? 本作とその主人公である彼女を終幕まで見通して得られる感想は、到底一つとは思えない。見る人それぞれによって、印象は異なっているに違いない。
 ちなみに、一度だけアルファが(ロボットにとっての涙の効用を説明すると共に)はらはらと涙を流す時があるが、そのシーンは言語に絶した描写であると個人的に思う。誰があの時のアルファの心情を遺漏なく言い表せるだろうか。すこぶる難しいはず。(ぜひ見てみてください。)


 ここまででこの作品の長所の幾ばくが語れたのか分からない。気分としては未練がある。語り足りていないという感じが心の底に固着しっぱなしで中々抜けない。
 しかし、わたしがしみじみと見入り感無量になったのは、(これはネタバレとはならないと思うので言ってしまうが、)アルファが目をうるませながら絶景を眺めている時の、あかりに照らされた彼女の表情である。
 一体あの時代のだれがこんな、ともすれば風流という皮相な感想のみで流されそうな味わい深い情趣に好奇の目を注いだのだろう? こんなコンセプトでアニメが作られたというのが奇跡とさえ思われるのは、大げさだろうか?


 とにかくこの『ヨコハマ買い出し紀行』、一生忘れることの出来ない作品である。」


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2000-07-19
DVD



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